子供が主体的に学ぶことができる授業づくり ~子供の気づきを生かして~

 

1 生まれた疑問
 前回は構造的な板書を生かし児童の問題解決的な思考を助ける展開例について紹介した。
 道徳が教科化され、小学校の量的確保は確実に進んでいると感じている。また、指導すべき内容が明確になり、ブレない授業が行われるようになってきた。
 私も、この1年間、主題を提示し、早い段階で共通の問題意識を持って取り組むことのできる授業づくりを模索してきた。
 年間指導計画に沿って計画的に授業を進めるにあたり、教科書に示された主題名を手掛かりに問いを用意することは、ある意味で当然の流れであると思う。
 しかし、一方でこうした授業が価値を教えることに偏っていないかという疑問も生まれてきた。そこで、今回は主題を示さず、教材中の課題解決を通して生まれた子供の気づきを生かした展開例を紹介したい。

 

2 授業の実際
教材名 「青の洞門」
出 典 東京書籍 6年
ねらい
 人間の崇高さや可能性に触れて深く心が動き、人間として成長していこうとする意欲を高める。


○教材について
 本教材は、ご存じのように「感動、畏敬の念」を扱う有名教材である。主人殺しの罪を悔い僧として命を懸けて岸壁に道を通そうとする了海と、了海を親の敵としてかたき討ちの旅を続けてきた実之助の物語である。時代背景や内容の難しさからなかなか思うような授業ができない難しい教材でもある。

 

○授業づくりの構想
 今回、子供が主体的に学ぶことができる授業を構想するにあたって二つの仕掛けを用意することにした。
 その一つは教材の概要と、道徳的問題を誰にもわかるように示す(知らせる)こと。二つ目は学習過程を工夫することである。
 冒頭で述べたように、これまでは、はじめに主題を示し、道徳的課題を押さえて授業を進めてきた。つまり大きな問い(テーマ発問など)小さな問い(教材発問)という流れである。
 今回はこれを逆転し、小さな問い(教材発問)大きな問い(話し合いから生まれた問い)で授業を進めることとした。

 

○展開の工夫
①事前学習を行う
 子供が主体的に学ぶためには、まず、教材のもつ道徳的課題を全員が正しく理解することが大切である。そこで、事前に教材を5W1Hで整理した資料を作り事前に読ませた。一読後の子供の疑問を紹介する。
・村人は、なぜはじめ手伝おうとしなかったのか?
・了海が、急に世のために尽くそうと思ったのはなぜか?
・どうして、実之助は了海を切ることをやめたのか?
 この授業では、こうした子供の疑問(なぜ?)を生かすことを大切にした。

 

②子供の疑問を生かす
 実之助は、かたき討ちのため9年間旅を続け、ようやく了海を見つけた。教材には、いよいよ「切る」という場面が3度描かれている。出会い、数日後の夜ふけ、そして洞門完成の場面である。
 教材を読んだ子供には「なぜ実之助は了海を切らないのか」という疑問が生まれていた。
 そこで疑問を一つ目の問いにして授業を進めた。前二つの場面は全体で、完成場面については班ごとに話し合いを進めることにした。
 以下に、完成場面での理由を紹介する。
・驚きと感動で心がいっぱいになったから。
・復讐心よりも驚きや感激の方が大きくなったから。
・了海の気持ちが分かったから。
・もう切りたくない。
・復讐心が消えた。
・復讐心が尊敬に変わった。
・ここまでやった人を殺す必要があるのかという思いが生まれた。
・手伝ってよかったという思い。
・手伝ってみて、実之助は自分も人のために働ける人になりたいと心が動いた。
・了海は人のために動ける人に変わった。だから、実之助も変わった。

 

③話し合いから生まれた気づき
 子供たちは話し合いの中で教材中の人物全員が、はじめと変わったことに気づいた。中には、目的が変わったという意見も聞かれた。

そこで、二つ目の問いを
「なぜ、このように変わることができたのだろう?」とした。


3 構造的な板書
 この授業でも、構造的な板書を心がけた。板書は次のようになった。

 
4 子供の振り返り
 話し合い後の内省化の段階
・自分が人を見て変わることは少ないけど、了海の姿を見て実之助が変われたことはすごく良いことだと思う。
・一人の良心や努力でみんながよい心に変わることができることがすごいことだと改めて分かりました。自分の良心で皆が変われたらいいな。
・授業を通して一人が失敗してけんかになったとしても、その一人が努力や良心を持って行動し、それがみんなに移るといいなと思いました。
・はじめ了海はすごいと感じるだけでした。でも、了海をなぜ切らなかったのかに注目して考えてみたら考えが変わりました。
 今回は、子供の気づきを生かすことでより主体的な学びができたと感じている。

 

5 学習指導の展開

 

 

 

 


<NO. 155 令和元年6月1日発行より>

 

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