心みつけを通して豊かな心を創造し、よりよく生きる力を育む児童育成

 

 平成30年度から道徳が教科化されることを踏まえ、平成7年度から継続実践することで、深化・発展させた道徳の実践を検証し論文にまとめました。 
 その結果、平成28年度上廣道徳教育優秀賞を受賞。平成30年度東海三県道徳教育研修会で発表、概略を紹介します。

 

Ⅰ 研究の構想と構造
1 主題の解釈
○「心みつけのノート」は、その子と家族の成長の足跡であり、道徳の時間を核として、学校行事などの節目に見つけた心を記録するノートである。また、答えが一つではない問題を道徳的課題として捉え、考えたり議論したりした内容を記録していくものになっている。
○「豊かな心の創造」指導計画は、道徳教育の基盤である。道徳教育を通して児童の心を育む思いと期待を「Active practices」(造語)と解釈し、指導計画を教師も日々の授業に積極的に活用する。そのために、絶えず更新して試行するものとして捉えている。

 

2 研究の構造と仮説
(1)研究の構想図(略)
(2)仮説「豊かな心の創造」で目標を設定し、計画的な振り返り(自己評価)を「心みつけのノート」で行うことで、児童の心の実態と指導の実態が把握でき、存在感を味わいながらよりよく生きようとする力が育まれるだろう。また、授業の改善に役立つであろう。

 

3 検証の方法
○「心みつけのノート」の分析
○  保護者アンケートの分析
○「豊かな心の創造」の評価等

 

Ⅱ 研究の実際
視点1 保護者・教師が協働して児童の心育てに取り組む。
(1)「心みつけのノート」(表1)の実践        
 道徳の時間に、自分の考えをワークシートやプリントにしてファイリングする方法では、児童が持ち運ぶ際に抜け落ちたりランドセルに入らなかったりする不便さがあり、蓄積することが難しく、蓄積されたシートを活用することもできなかった。 そこで、道徳の時間に見つけた自分の心を大事に積み重ねてほしいという願いから、40ページのワークシートをノートに製本して使用することにした。

<心みつけのノート>
①題名は、資料名か自分が見つけた価値につながる簡単な言葉で書く。
②最初に感じたことや、板書、図や絵。
③みんなで見つけた価値に対しての今の正直な気持ちや新しく見つけた事柄など。
④家族に自信や勇気につながるような感想や励ましを書いていただく。
⑤見つけた価値は、今、何点か自己評価する。

 

(2)保護者の役割を知らせる取組
・始業式に「心みつけのノート」と、使用方法を紹介する道徳指導のリーフレットを配布。リーフレットには、いじめの授業で書かれた六年生のノートや成長を支えてくれた家族について書かれたノートを紹介。家族の関わりの大切さを伝えた。
・年度当初、「心みつけのノート」の家族メッセージの記入をお願いした。
・学級通信や学年通信に、心みつけコーナーの欄を設けた。授業の様子や家族メッセージでの支援の様子を伝えた。
・緑が多く自然を大事にしていることが学校の誇りである。学校公開日に、参観していた父親に緑化日本一になった当時の様子を話してもらった。


視点2 日々の授業を改善し、成果や課題を次年度に伝える取組
(1)「豊かな心の創造」の実践

 毎週の道徳の時間での指導が大事だと考え、道徳指導をPDCAサイクルで考え、日々の指導で繰り返しスパイラル的に向上できるように「豊かな心の創造」を構成した。
①月案指導自己評価シート(表2)

 ○道徳面の児童の実態★1
・月初めの児童の実態の記載
・行動として取り組みたいこと
○今週の内容★2
・各週の内容・ねらい・資料・手立て・関連を年度当初に記載している。
○今月の児童の変容等★3
 月末にその月の指導を振り返って、次の手だてを考える事実を記録する。例えば、子供との会話から、どの子も家族に褒めてもらいたいという気持ちがあることや、児童の成長を急ぎすぎて、親から叩かれることがある児童の割合が半数にも及ぶことも分かった。

 

Skill up カード(表3)

  道徳の授業は、価値の方向づけ・価値の追求(把握)・価値の自覚(まとめ)の段階を経て行われる。各段階での「教師の手だて」によって、児童が価値を主体的に見つけることができるかが左右される。各段階での「教師の関わり」のポイントを整理し「Skill up カード」を作成した。
 児童の活動に応じて「価値の方向づけ」・「価値の追求」「価値の自覚」の三分類とし、それぞれで特に大切な「教師の関わり」を示した。そして、各項目を実践したかどうかを三段階で自己評価するようにした。このカードを使うことで担任が「めあて」を意識しながら、児童と共に価値を見つける展開が定着してきた。

 

道徳の特別教科化の先行実施
・平成28年度に内容の先行実施を行い、若い教員に現在の指導の継続でもよいことを認識してもらいたいと考えた。
・発達の段階に応じた体系的な指導ができるように、問題解決的な学習を取り入れた。
・「月案指導自己評価カード」を改編し、指導のめあてをキーワードと内容に変更した。「はしの上のおおかみ」(一年)を2時間計画で授業実施した。児童が2時間目に作ったやさしい熊さんの表を使って、帰りの会で優しくできたことと人数を記録した。

 

Ⅲ 研究の成果と課題
○児童の自己評価だけでなく、 教師も児童の心の成長を確認できた。若手教員がこのノートを使用するよさや児童の成長、家族の温かなメッセージに感動する様子が職員室で見られるようになった。
○「心みつけのノート」のよい点や心掛けていること、親の役割について有効な回答を得ることができ、保護者・教師が協働して児童の心育てに取り組むことができた。
○「心みつけのノート」と「豊かな心の創造」が核となり児童も教師もPDCAサイクルで生き方を更新しながら成長し、存在感を味わいながらよりよく生きようとする力が育まれた。
○2時間計画の道徳や討論型道徳など道徳性の育成に向けて具体的な方策を明確にすることができた。
●「心みつけのノート」から、実態が把握できても、すぐには改善してないことが分かった。今後も、討論型の道徳や2時間続きの授業づくりを継続していく。
●「Skill  up カード」から、価値の把握から自覚につながるための手だてが目標になってしまう教師は少なくないことが分かった。ねらいを達成するための手段として手だてを利用できるように、手立て例を分析し、共有する。

 

心みつけ通信から

1学期は「心みつけのノート」に半分も書けなかったのに、2学期に入ったら急に全部の行が書けるようになっていて自分でもびっくりしました。成長したのかなと思いました。
家族メッセージ…このノートを見て、○○が成長していく姿が伝わりました。どんどん心みつけをしてください。
今までいろいろなお話を読んだりいろいろなことを学んだりしました。一つ一つのページで一つのことを学びました。読んでみると、最初はどう思ったかぐらいのことしか書かなかったのに、後からは、ちゃんとこれからの大事なことまで書けるようになりました。
家族メッセージ…話の感想だけでなく、今の自分についてこれからどうしたらいいかも考えられるようになったね。
私は、いろんなお話や、ペアと遊んだりしました。道徳は答えがないから、みんなと違いがありました。私よりすごい意見がありました。
家族メッセージ…みんなの意見や考えを聞くと、そういう考え方もあるのかと、勉強になったり、自分のためになったりするね。道徳は大事だから真面目に取り組んでね。
「心みつけのノート」を読んで、ぼくはプリプリ怒るときがあるのだなと思いました。だから、次は絶対に怒らないぞと決心しました。ぼくは、小さな頃からいろいろな成長をしてきました。
家族メッセージ…この1年間で友達も増えて先生や友達からいろいろなことを学んだね。お母さんも、○○が優しいあきらめない心、ありがとうの気持ちをもつことで成長したと思います。

 

<NO. 154 平成31年3月1日発行より>

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