問題解決的思考を助ける授業づくり―構造的な板書の工夫―

 

1.板書を構造化する

 道徳科がスタートし、多様な授業を参観し、多くの先生方と学んでくることができた。その中で「板書の構造化」が話題になることも多かった。そこで、今回は問題解決的な思考を助ける構造的な板書を工夫した展開例を紹介してみたい。

 

2.授業の実際
教材名 「心のレシーブ」
出 典 東京書籍 5年
ねらい
 友達と互いに信頼し助け合って友情を深め、性差を超えて有効な人間関係を築いていこうとする心情を育てる。

 

○教材について
 本教材は、クラス対抗のスポーツ大会において同じチームとして参加することになった男女4人が、対立や互いの不信感を乗り越えて同じ友達として信頼し協力し合っていこうと変わっていく様子を描いたものである。
 本実践は4人の対立の状況を押さえ、最後に仲良く協力し合う場面と比較し「なぜこのように変わることができたのか」という「問い」を設定し、考え・話し合う学習を構想した。その際、解決を助ける構造的な板書を工夫することとした。

 

○展開の工夫
①授業の「問い」をつくる
 授業の初めに、今日は「友情を深める」というテーマについて話し合うことを知らせ、友達を応援したり、励ましたりした経験を聞いた。次に、教材の前半を読み、問題場面の絵を提示してチームの男女それぞれが、どのように思っていたかを全体で話し合った。
男子
・頑張っているのに、ひどい!
・女子の態度が冷たい。
・ぼくたち、信用されてないな。
・良夫がかわいそう。
・ぼくたちだって優勝したい。
・でも、僕たちは弱いし…。
女子
・(男子)もっと、がんばって!
・やる気がないよ。
・練習をちゃんとしてほしい。
・これじゃ、勝てない。
 このように意見が出たところでチームの状況を聞くと、「男女の仲が悪い」となった。
 次に、教材を最後まで読み、場面絵を提示した。再度チームがどういう状況か聞くと「仲が良い」に変わった。そこで、この二つを対比しながら「チームは、なぜこのように変わることができたのでしょう」という「問い」を投げかけ、授業の中心課題を全体で共有した。

 

②小グループでの話し合い
 小学校では教師の用意した発問に沿って順に考えながら授業を進めることが多い。
 しかし、このようにテーマや学習課題がはっきりしている場合は、子供主体に、もっとダイナミックに話し合わせたい。
 そこで、課題の解決を助けるために補助発問を加え、小グループごとに話し合うことを中心の学習活動とした。活動は男女それぞれの視点から、チームが変容に至ったと思われる事柄を思いつく限り出して話し合うように指示した。
男子
・やる気を出した。
・反省し謝る気持ちになった。
・勝ちたい気持ちが出てきた。
・女子の気持ちをくみ取った。
・女子に迷惑かけたくない。
・素直になった。
女子
・ちゃんと、男子のことを見ていなかった。
・男子の頑張りに気づいた。
・気づかなかったことを、謝りたいと思った。
・感謝する気持ちがわいた。
・素直になった。

 

③構造的な板書
 下図に記したように、まず、黒板の左上に主題名「友情を深める」と書き、次に、最初のチーム状況を場面絵に沿って整理し、さらに、その右に最後の場面絵を貼り、仲が良いということを押さえた。そして、黒板中央上に中心となる問い「チームは、なぜこのようにかわることができたのか」を提示した。

 

④グループ活動と全体協議
 グループ活動に12分とり補助発問も参考にしながらチームが変わった理由を可能な限り考えさせた。全体の話し合いでは、男女それぞれの視点で考えることで、理由の違いや似ている点などを整理していき、不信感が信頼へ変わった理由を多面的に捉えることができた。

⑤授業の振り返り
 授業の振り返りで、子供たちが授業テーマである「友情を深める」ために大切にしたいことについて考えたことを、いくつか紹介してみたい。
・相手のことを信じること。
・友だちへの感謝や、素直な気持ちをもつことが大切だ。
・人を喜ばせるような努力をして、友だちがいい気持ちになるような声掛けをしたい。
・自分がむっとしたときでも、相手のことを考えてから言葉を発する。その人が失敗しても、落ち込まないような言葉をかけたい。
・お互いの思いやりを大切にして、人と優しくふれ合いたい。相手の気持ちをよく考えて一つ一つ行動できたらいい。

 

3.板書を構造化するよさ
 今回の板書は、最初と最後の主人公の変容に着目し、その理由を対比して考えることができるよう表し方を工夫した。
 誰もが主体的に考え、話し合える授業にするには、①この時間の道徳的問題は何かを全体に明らかにすること ②課題解決には、どのようなことを考えればよいかがわかること ③自他の意見を比べて考えることができること、といった要素が必要であると考える。構造的な板書がそれを助ける役割を持つことにより思考が整理され、対話的で深い学びが可能になるのである。
 授業では、「仲が悪い仲が良い」という変化を対比して板書し、「でも」と「(変わる)きっかけ」を中央の問いと矢印でつなぐことにより授業の課題を全体で共有することができた。さらに、出された意見を整理し、最初の状況と対比して考えることで課題解決が容易になった。
 このように、板書に主題名と学習課題、そして、問題解決のプロセスが一体になってみることのできる板書にすることで、問題解決的な思考を助けることができるのである。

 

4.指導案

 

 

<NO. 154 平成31年3月1日発行より>

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