子供が主体的に学ぶ道徳科への提案

1 道徳教育の全体計画の再構築

 平成三十年度、小学校の「特別の教科  道徳」(以下「道徳科」)がスタートした。各学校では、道徳教育の全体計画を見直したであろうか。これは、道徳科に変わることへの大きな課題である。

 

 学習指導要領第三章道徳の第三の一 各学校においては「道徳教育の全体計画と道徳の時間の年間計画を作成するものとする」に基づくものである。

 

 したがって、各学校では校長が道徳教育の方針を明確にし、指導力を発揮し、全教職員が協力して、道徳教育を展開するため道徳教育推進教師を中心とした「道徳教育の全体計画」と、それに基づく「道徳科の年間指導計画」を改善する必要がある。

 

 昨年度、第五十四回教育者研究会に参加した。分科会の協議の中で、提案者の学校の全体計画と「学級の目標」との関連が質問された。全体計画は、学校の教育目標、道徳教育の重点目標、道徳の年間指導計画、そして、学年の目標と関連していくものであり、学級の目標は学校の教育目標の一翼を担うものである。

 

 私は、計画は単なる机上のプランでなく、学校の教育活動全体を見渡し、立案されるもので、実際に生きて働くものだと思っている。道徳科のスタートにあたって、各学校では校長の方針のもと、学校の教育目標を、全教職員が真摯に受けとめ、学校が具現化しようとする道徳目標の構想を再構築していってほしいと願う。

 

2 道徳科における指導過程

(1)主体的自覚をうながす指導過程

 今日の子供たちが、自分なりに正しい生き方を見い出し、主体的に未来に立ち向かっていくことのできるよう、その素地を養っていくことが必要である。

 

 学習指導要領に「学校における道徳教育は学校の教育活動全体を通して行なうことを基本とする」と述べられている。したがって、教科、特別活動を含めた全領域における指導を通して道徳教育の充実を図らなければならない。

 

 そのために道徳科では、「今までの自分はどうであっただろうか」という振り返りを年間三十五回積み重ね、問題にぶつかったときに望ましい対処ができるよう、その子なりに道徳的諸価値を高めることをねらっていくのである。子供一人ひとりが、主体的に自覚できるよう指導することが大切になってくる。この段階をいかに設定し、いかにしてより効率的なものにしていくかを配慮した指導過程を考えていくことが大切なのだと思う。

 

(2)基本過程とその応用

 「一時間の授業の流れ(指導過程)をどのように組んだら、充実した道徳の授業が展開できるだろうか」、これは誰もが考えることである。下の表(表1)は、「特別の教科 道徳の特質を生かした授業の改善」と題した前文部科学省教科調査官 赤堀博行先生の講話の中から「自己を見つめる」ための基礎・基本となるものとして構造化したものである。

 「自己の生き方を、道徳科の中でどう考え、話し合うか」を展開するための、教師の授業への取り組み方の中核になるものであろう。

 

(3)道徳科の指導過程

  〜子供が主体的に学ぶ道徳へ〜

 文部科学省の先生の「考え、議論する道徳」の講話や、先生方の実践から子供が主体的に学ぶ道徳への指導過程(表2)を作成し、「道徳科の指導がどうあるべきか」、先生方への意識の転換を図りたいと考える。

 

・自分自身を見つめる。

・人物に共感し、自分との関わりで、気持ちを想像する。

・自分との関わりで多面的・多角的に考える授業を展開(どのような訳で大切なのか、どうすることが考えられるか。)

・主体的とは

「子供が自らを振り返って、成長を実感できるように工夫ができる。子供がこれからの課題や目標を見つけたりする工夫ができる」

①導入は短時間、明確につなぐ。

②発問は、道徳的価値を念頭に絞り込む。

③子供の活動(話合い、対話、議論)に時間をかける。

④終末は子供自らが考え、理解し、主体的に学習に取り組めるようにする。

 

3 段階的な指導過程

(1)低学年(一・二年)段階の指導

内容項目 親切

 

主題名…はしの上のおおかみ

 

ねらい…自分勝手なわがままや意地悪が、みんなに迷惑になっていることに気づかせ、友達や小さい人に親切にしようとする気持ちを育てる。

 

資料(あらすじ)

 山の中の一本橋のまん中でうさぎとおおかみが出会った。おおかみはうさぎをにらみつけ、追い返した。おおかみは、意地悪が面白くなり、それからは、毎日橋の上で通るものを待ち伏せした。ある日の夕方大きなくまが渡ってきた。おおかみはあわてて引き返そうとしたが、そのとき、くまはおおかみを優しく抱き上げ後ろへ降ろしてくれた。それからは、おおかみもうさぎたちに親切にした。

 

展開

(導入)いじめたり、いじめられたりしたときの感想を発表する。

 

(展開前段)

○TP『はしの上のおおかみ』を見て話し合う。(役割演技をさせながらでもいい)

 

発問 おおかみのしたこと、どう思うか考えてみよう。

(展開後段)

○自分ならどうするかを考える。

○みんなとなかよくするってどんなことか考える。

 

(終末)

○くまさんやおおかみさん、うさぎさんに手紙を書こう。

 

(2)中学年(三・四年)の指導

内容項目 規則の尊重

 

主題名 雨のバス停留所で

 

ねらい 規則の必要なわけを知り、すすんで規則を守ろうとする態度を育てる。

 

資料(あらすじ)

  雨降りの日に母親と外出した主人公よし子が、軒下で雨やどりをしながらバスのくるのをまっていた人々の順番を無視して列に割り込もうとするが、母親のいつもと違う様子を見て、自分の行為を反省し、規則を守ることの大切さに気づく。             

 

展開

(導入)

○日常生活の中で、規則を守らなかった経験を発表する。

 

(展開前段)

○資科「雨のバス停留所で」を読み、雨やどりをしているよし子の気持ちを話し合う。

発問 バスが来たことを知ったよし子のしたことをどう思うか(自分ごととして)話し合う。

 

(展開後段)

○お母さんのしたことを知ったよし子さんの思いに関わることを自分に置き換えて考えさせる。

○ワークシートに書く。

 

(終末)教師の実体験(悩み)を伝える。

 

(3)高学年(五・六年)の指導

内容項目 寛容

 

主題名 銀のしょく台

 

ねらい 人の気持ちや立場を重んじ広い心で過ちを許そうとする心情を育てる。

 

資料(あらすじ)

  ジャン=バルジャンは長い服役を終えて出所したが、だれもが敬遠する。やっとミリエル司教に温かく迎えられる。それにもかかわらず、銀の食器を盗む。憲兵に捕らえられ、司教の前に連行されるが司教は怒るどころか、銀の燭台まで持たせる。

 

展開

(導入)

○毎日の生活の中で、許したり許されたりしていますね。許されないことをして、考えさせられたことってあるかなあ。そんなときどうしましたか。

 

(展開前段)

○資料「銀のしょく台」で考えてみましょう。

○宗教的な事項を簡単に説明しながら、「銀のしょく台」を読む。

 

発問 ジャンを迎え入れたミリエル司教の言動をどう思いますか。

・グループで話し合わせ正否の如何についてまとめる。(対立・葛藤)

(展開後段)

○将来のある人間として、最も深い許しをどう認めたいか。共感したこと、どうあるべきか、感想を書いてみよう。

 

(終末)

○教師の実体験(悩み)を伝える。正否の感想を教師として認め、発表する。

 

(4)自己をみつめる指導法

基本的な指導法

○話合い、議論、教科書の取り扱い、視聴覚教材利用、役割演技、教師の説話、手紙を書く、考えを書くなど

 

○学年、学級の実態を踏まえる

低学年では、

 視覚に訴える方法、

 動作化する方法

 

中学年では、

 読み物資料をじっくり読み考えさせる方法

 

高学年では、

 話合いを深め、自己を語らせる方法

 

○教師の個性を生かす方法

朗読、範読(心をゆさぶる)

終末の説話(余韻を残す)

考えを書かせる(自己を見つめさせる)

 

話合い

 低学年では、教師との対話の中で反応を受け止める、つぶやきを聞き逃さない。各教科、領域などで話合いのルールの指導を行う。

 

 中学年では、話合いのルールの定着、活発化をねらう。人間関係の重視(同調、賛成、反対)、他のグループとの反対。

 

 高学年では、内面的に深い話合い、自己を見つめ、他の身にもなれる。

 

4 子供が主体的に学ぶ道徳ヘ

 学校教育を中核とした、よりよい道徳教育を発信していかなければならない。それには、教育基本法のもと、日本の未来に生きる力強い子らを育成していく教師の使命が大切であり、教師一人ひとりの品性向上に期待がかけられていくことだと信じる。

 

<NO. 152 平成30年9月1日発行より>

 

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