席替え

2018/09/07

 6年2組で席替えがあった。その翌日、C雄の母親が校長室を訪ねてきた。話を聴いてみると、昨日の席替えで、一番並びたくないY雄と並んでしまったというのである。担任に、勉強に支障が出るから替えてほしい旨を申し入れしたが、担任は頑として受け入れないので、校長から話してほしいということであった。

 

 私は母親の顔を睨みつけながら大きな声で言った。「お母さんは、C雄君に不幸な人生を歩ませるつもりですか?」母親はびっくりして「なんですか、いきなり!」と身体を乗り出した。「お母さん、C君は優秀で東大をめざしていることを知っています。今、どんな立派な大学を卒業して一流の会社に就職しても、同僚や上司と人間関係が結べず、退職してしまう人が増えているのですよ。人間関係というのは、苦手な人、嫌いな人、自分と合わない人と、どのようにうまく付き合っていくかという能力です。分かりますかお母さん? この能力は、小中学校時代に培われます。人間関係、別な言葉で言えば『社会性』です。その基盤はクラスの友達であり、ご縁があって隣に座った友達です。一番嫌いな友達と隣になったのは、良い勉強のチャンスが訪れたということです。そして少しでも仲良くなれるように励ましましょう。担任もそれを望んでの席替えです。お母さん、この色紙をC君の机の前に張っておいてください」と言って、私は一枚の色紙を渡した。色紙には「苦手と思う人ほど、自分の心の成長に大切な人」と書いてある。「今後、C君がY君と仲良しになれるよう、担任と私が見守りますから一ヶ月ほど時間をください。それでもだめだったら、お母さんの言い分を考えましょう。ただし、お母さんも協力してくださいね。」

 

 私は笑顔で語りかけた。母親は完全には納得した顔をしていなかったが、私の次の言葉で、小さくうなずいて、校長室を出ていった。「お母さん、一ヶ月時間をください。担任と私で、C君をY君と仲良くできなかったら、席替えも考えましょう」と念を押した。

 

 それから担任と校長で、C君を加えてY君と仲良くする方法を考えた。それからC君の指導が始まった。

 

「まずC君がY君に挨拶をする。無視されても続ける。」C君は何度も挫折しそうになったが、担任は根気強く指導を続けた。私も温かく励ましながら見守った。担任はY君にもC君の気持ちを伝えた。Y君が変わり始めた。少しずつ心が寄り添っていった。二週間で二人とも会話を交わすようになった。間もなく、二人のよきライバルとして切磋琢磨する姿が見られるようになった。 (A)

 

<NO. 151 平成30年6月1日発行より>

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