いよいよこの4月から、教科書を使った道徳教育がスタートする。現場ではおそらく期待よりも不安が大きいと推測する。三重県の推進委員会でもこれまで幾度も道徳教育の在り方をめぐって、議論を積み重ねてきた。その委員の中からも「4月から大丈夫なのか」という心配の声が上がっている。ところで、現場では、教科書を使うことになると特定の価値観を押しつけてしまうことにならないかという懸念がある。もとより、文科省はそれとは全く逆に、「考え、議論する道徳」を提唱している。が、具体的にはどうすればよいのだろうか。

 

 ある小学校で3年生の道徳の授業を見せてもらった。「友だちっていいな」という主題のもとに、先生と子供たちの間で話し合いが進められた。3年生にしてはよくこれだけの意見が言えるものだと感心した。日頃の先生の教育の賜物であろう。授業は、いつも宿題を忘れると見せてくれる子が、今回は見せなかったことについて、なぜだろうかを考えるところで議論の山場を迎えた。「よく宿題を忘れるから、いつも見せてあげると本人のためにならない」「宿題は自分でやるものだということを教えたかった」など、さまざまな意見が出た。こうした授業は今後の一つの参考になるであろう。まさに「考え、議論する道徳」のモデルともなるものだからである。

 

 このような議論の中、ある子が、「そんなのいじわるじゃない」と言った。私はハッとした。先生はどんな反応を示すだろうかと。ところがその意見は取り上げられなかった。おそらく先生の頭の中には、「友だちのことをよく知り、思いやり、助け合うことで、よりよい友だち関係をつくっていくようにしていくことが大切である」というシナリオがあったためであろう。もし取り上げていればいじめの問題にも発展したかもしれないと惜しまれた。大切なのは議論のプロセスであり、必ずしもシナリオ通りでなくてもよい。もっともっと子供の声を聞こう。そこには必ずや問題の本質に迫るものがあるはずだ。これからの道徳の授業では、この教師の聞く耳が試されることとなろう。

 

<NO. 150 平成30年3月1日発行より>

 

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