道徳の教科化で何が最も重要なのか

 戦後70年以上にわたって等閑視されてきた“道徳教育”が、やっと教育界で表舞台に立つ時代になったが、果たしてどのくらいの期間主役を演じ切ることができるのであろうか。

 

 思い起こすまでもなく平成元年(1989)に華々しく登場した低学年対象の「生活科」、更には平成12年(2000)から段階的に始められた「総合的な学習」は、いずれもその実施前や実施後の数年間は、日本中の大舞台で主役を演じ切った。しかし残念なことに、その後は満ちた潮が引くように主役から引きずり降ろされ、舞台上での晴れ姿は殆ど見ることができなくなってしまった。「特別の教科・道徳」に対する興味や関心の程度は、果たして一時的なファッションなのだろうか。

 

 現在、教育現場では道徳教育や道徳授業について万全を期するために、その準備に余念がなく平成30年(小学校)を待っている。どの学校も指導内容、指導方法、評価などの諸問題について研鑽を深め学校体制を整えてきている。これらの取り組み自体は必要なことであるが、最も重要なことが抜けているような気がしてならない。

 

 道徳教育の碩学・廣池千九郎が遺した格言の中に、「まず精神を造り次に形式を造る」という言葉がある。ともすると私どもは、「形式を造る」ことのみに気を取られ、最も重要で基本的な「精神を造る」ことに気が回らない場合が多い。学校現場においては、「カリキュラムの設計」は当然のことながら、肝心要の「教師の高い精神性」即ち、教師の人間性豊かな品性が道徳教育の基底になければ道徳教育は成立しないのではなかろうか。一人ひとりの教師が、一人の人間として真摯に生きる姿勢こそが不易の教育原理であり、これこそが「形式」を生かすカリキュラムにならなければならない。

 

 道徳は人間の幸・不幸を左右するほどの重大な教育であることを教師一人ひとりが真剣に自覚して、平成30年を迎えてほしいものである。

<NO. 149 平成29年12月1日発行より>

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