私を鍛え育ててくれたA君・元気ポスト

 私と出会い、育ててくれた思い出深い児童の一人にA君がいました。
 

 A君は、小学校に入学する前から、職員室の話題になる子でした。最初2か月間は、普通に小学校生活を送り、安心していました。ところが、水泳が始まった頃から、教室で自分の持ち物を投げるようになったのです。ちょっとしたけがをしたことから保健室が気に入り、好き放題なことをするようになりました。冷蔵庫で氷を作ったり、頭を入れて涼んだりなどなど、あきれるようなことをしたのです。
 

 ある時、A君が「お父さんは、ぼくが悪くなくても怒る」と、つぶやきました。それで、「学校はルールを守っていたら、わけもなく怒られることはないんだよ」と、教えました。
 

 A君の指導に困っていた私は、鳴門教育大学准教授の井上とも子先生にご縁をいただき、一つ一つの事例について指導していただきました。「授業中に物を投げるのは、授業が理解できないから、パフォーマンスをしているのではないでしょうか」と。そこで、私の学級でできることとして、「1日5時間の授業の中、2時間は頑張ろう」と提案しました。自分が選ぶことにより、がまんできる可能性が高まるだろうということから始まりました。一つのことが定着するまでに3か月はかかることを覚悟して取り組みました。本当に一進一退のような毎日でした。でも、3か月が経ったとき、気が付くと1日のうちの2時間の学習は、「ここまでは、やろう」と担任が決めたところまでは、できるようになっていました。
 

 ある日の音楽の時間、メロディベルが出し放しになっていました。「あっ」と思った瞬間、それをA君が手に持ち、投げていました。持ち手が折れてしまいました。もちろん彼と私は一緒に、校長先生に謝りに行きました。井上先生にもメールで報告すると、「学校にご迷惑をかけたから、みんなのためになることをしましょう」と提案してみることを教えていただきました。
 

 次の日の昼休みに、運動場の小石を拾うことにしました。バケツを持ち、100個拾おうと決め、私が80個位は拾ったでしょうか、100個目を拾ったA君に「やったね」と言うと、「ぼくは、ちょっぴりしか拾ってないし」というので、「先生がお手伝いしたけど、A君もちゃんと拾ってたよ」と安心させました。昼休みがまだ5分ぐらいあったので、「遊んできたら」と声をかけると、ブランコに向かって喜んで走っていきました。
 

 月曜日の全校朝会も、行きたがりませんでした。そこで、列の一番前に並ばせ、「私と手をつないで、一緒に行こう」と、声をかけると参加できるようになりました。
 

 A君は給食当番も嫌でした。役割を決めた時、食器係に決まりました。しかしやりたがらないので、何の当番がしたかったのかと聞くと、「デザート」と言ったので、すでに決まっている子にお願いさせることにしました。将来、社会に出たときに役に立つようにという配慮からです。この時に、お願いは断られることもあること、も念をおしました。A君が、デザート当番の子に「代わってください」とお願いすると、この子は一番人気の当番になってうれしかったはずなのに、なんと「いいよ」と、二つ返事で譲ってくれたのです。なんて子供というのは気持ちが優しいのでしょう。もちろん、「ありがとう」と言うことも教えました。「どういたしまして」と、言ってもらって、A君はにこっとほほえんでいました。
 

 たくさんの出来事がありました。ほぼ全て井上先生にメールで報告をし、アドバイスをいただきました。その通り実行し、その結果を報告しました。うまくいかなかったことは、新しく提案していただきました。相談は、隠し事をしないことが前提であると教わっていたからです。
 

 やりとりしたメールを、校長先生にも読んでいただきました。一番心配してくださっている校長先生に、できていること、できていないこと全てを知っていただくことで安心していただ。

 

「元気ポスト」 
 教室は、集団生活ですから「ふわふわ言葉といがいが言葉」が飛び交います。嫌なことは、次の休み時間にクールダウンした時を見計らって話し合わせると、たいがい、早く遊びに行きたい子供たちですから、自分の悪かったところを素直に相手に謝罪して、いつの間にか元のように仲良くなっています。

 

 逆に友達や自分を元気にする言葉が教室の中で発せられたら、カードに書き、掲示にしています。そして、「ありがとう」を見つけたら、子どもたち個人のポスト(封筒)に入れることにしました。
 

 最初は、みんな一生懸命書くのですが、そのうち下火になる時があります。この時が、担任の出番です。大人は子供に指示を出しますが、このときは私が、普通のこと「係を頑張っていた」「ほうきの使い方が上手だった」「トイレのスリッパを揃えてくれていた。」など、探すのです。見る心がないと見えません。教師に書いてもらいたくて良いことをする子もいますが、最初はまねごとからでも良いのです。するうちに自分の喜びに変わってくるはずです。まずは形から、心も伴うようになるように教師が言葉で表現していくことで、子供の心は育っていくように思います。
 

 道徳の授業で総合単元的学習を組むときは大体1か月が多いのですが、私は「感謝」に関しては1年間続けます。貯まったカードはノートなどに貼っていき、自分の宝物にします。それを個人懇談の前に集めておき、保護者の方に見ていただくと表情がぱあっと明るくなられます。

<NO. 149 平成29年12月1日発行より>

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