学校の道徳教育を推進する

1、私の取り組み
(1)解決の糸口を求めて
 学習指導要領の改訂を受けて、「読み物道徳」から「深く考える道徳」への質的転換が必要であることは周知の通りである。しかしながら、現場で教壇に立つ仲間からは「どういう道徳の授業をしたらよいのか」という声が聞こえてくる。それは、経験年数の短い先生方だけでなく、たくさん授業をされてきたベテランの先生方も同様である。

 

 これらの悩みは私自身においても例外ではない。教員経験8年とまだまだ短く、この悩みに対する明確な解答を持っている訳ではない。では、何か解決する方法はないのだろうか。
 

 そこで、まず私が救いの手を求めたのは本であった。道徳教育の意義や具体的な授業実践例など、道徳に関する様々な文献に目を通すことで、授業へのヒントを得ることができた。


(2)授業を公開する
 次は授業である。子供を前にした実際の授業ではどうだろうか。しかし、授業するだけでは勿体ない。そこで、授業を校内の先生方に見てもらうことにした。つまり、自主公開授業である。決して堅苦しい感じではなく、「興味のある方はぜひ」という感じで声をかけた。

 

 流れとしては、次の通りである。
 

【1】本時案を作り、全教員に配布
【2】授業を公開
【3】反省会(放課後)

 

 これを本年度は五回実施し、毎回、4~5人の先生方の参加があった。反省会は和やかな雰囲気だが、非常に活発な議論が行われた。言いたいことを言い合えるのは、少人数であることが大きい。内容は公開した授業についてだけではなく、教員それぞれが持っている授業の悩みや教材の紹介、さらには、道徳教育の意義など、中身の詰まったものになった。
 

(3)思わぬ成果
 自主公開授業をした成果をまとめると、次の3つになる。

 

【1】授業改善
【2】教材の情報交換
【3】モチベーション向上

 

 特に、(3)の成果は予想をしていなかった。自分、そして悩んでいる先生方の授業改善を目的にした公開授業であったが、先生方からは「道徳の授業をちゃんとやってみたいと思います」「色々と悩む前にやってみよう」という前向きな感想をいただくなど、道徳の授業に対する学校全体のモチベーション向上に繋がった。

 

2、授業の実際
(1)偉人から学ぶ
 本年度は、偉人を教材に用いた授業をいくつか考えた。

 

 6年生という年齢は、他人の生き方と自分の生き方を照らし合わせて考えることができる発達段階にあると考えられる。偉人を知ることは、より質の高い生き方をイメージすることにつながるのではないかと考えた。
 

 また、社会科で歴史を学んでいることも重要なことである。偉人を教材に用いる場合、その歴史的背景が頭に入っている必要がある。しかし、これを道徳の授業の中で扱うと、四十五分の授業時間には到底収まらない。
 

 以上の理由から、6年生で偉人を教材に用いることが適切であると考えた。
 

(2)子供の実態
 偉人を教材に用いるに当たり、子供たちがどれだけ偉人を知っているのか気になり、5月にアンケートをとった。結果の一部を紹介する。

 

 野口英世をよく知っている子供が突出して多かったのは、昨年5年生の道徳の授業で、『私たちの道徳』(文部科学省)を用いた学習があったからだと分かった。
 

 アンケート結果からも分かるように、子供たちは偉人がどのように生きたのかほとんど知らない実態が浮き彫りとなった。
 

 日本にも、そして世界にもたくさんの偉人と呼ばれる人がいる。それは「教えなければ知らない」「学ばなければ分からない」のである。
 

 アンケート結果に驚くと同時に、偉人を教材に用いる意義は大きいと感じた。
 

(3)資料について
・主題名  誠実に生きる 1―(4)
・資料名   誠実な人―吉田松陰―
(『ゆたかな心〈6〉』)光文書院

 

 本資料は、海外渡航を試みる松陰がそれに失敗し、その罪で牢屋に入れられる場面を取り上げている。自分の信念を大切にする姿、自分のしたことを隠さず、正直に生きようとする姿が描かれている。

 

 

(4)授業展開
正直について考えました。
(T)自分が正直と思う人
 挙手した子供―〇人
 理由を聞くと、

 

Cウソをついたことがあるから、

 

でした。
 

コンビニで買い物したらおつりが五十円でした。しかし、店員さんから渡されたのは百円でした。
(T)あなたならどうしますか

 

C正直に言います。なぜなら心にもやもやが残るからです。
C罪悪感がすごくあるからです。
Cでも言いたいけど言えないかもしれない

 

蹴った石が他人の車に当たり、傷つけてしまったとき、
(T)あなたならどうしますか。

 

C言います。いつもそのことを考えてしまって楽しいことも楽しくないから。
C気づかれたら後が怖いから言います。
C学校で問題になるから言います。
C相手のために申し訳ないから言います。
Cおこられるのがこわい。だから言いません。
C責任をとるのがいやだから、言いません。
C弁償とか言われ、お金が払えないから言えません。

 

 と、意見が分かれたことには驚かされた。
 

松陰がペリーの船に乗って外国へ渡ろうと試みるが失敗し、近くの名主からは逃げるように勧められたにもかかわらず、自分の罪を正直に認めたことについて
(T)松陰はどんなことを考えていたのでしょうか。

 

C他の人に迷惑をかけるのはいやだし、迷惑を軽くしたいと考えたと思います。
C逃げてもどうせばれて死ぬから、正直に生きて死ぬと考えたと思います。
C正直に生きたほうがましと考えた。
C信念を貫いていたから死ぬだけ。
C日本をよくするという自分の考えを分かってほしい。ごまかしたくない。

 

 という意見があった。

 

 子供たちは正直に言う事が命の危機になる中でも、相手のことを考えられる松蔭に驚いているようだった。
 

 まとめで、子供たちのノートには「正直に生きる」ことについ「自分から逃げないこと」「人を信じること」「自分のことより人のことを考える」「嘘をつかないこと」ということが書かれていた。

 

3、終わりに
 この授業も公開し、反省会を行った。その中に、こんな意見があった。「資料には書かれていないが、松陰にも言うか言わないかの葛藤があったはず。そういった人間らしい部分にもスポットライトを当ててみると、より深い学びができたのではないか。」

 

 今後も、「深く考える道徳」を目指した取り組みを学校全体で進めていきたい。私自身も授業を通して道徳を子供たちと共に学んでいきたいと思う。
<NO. 148 平成29年8月1日発行より>

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