「考え、議論する主題追求型の道徳授業の実践」

1、はじめに
 平成30年度から、「道徳の時間」は、「特別な教科 道徳」になり、検定教科書が導入され、文章表記での評価も行われるようになる。道徳教育の目標も、「道徳的な判断力・心情・実践意欲と態度」となり、「心情」よりも「判断力」を前面に出したものとなった。道徳教育は、今、大きな変革の時を迎えている。これからは、道徳の授業においても「思考力・判断力・表現力を育成する授業」を、これまで以上にめざしていかなくてはならない。そこで、自己の生き方を考え議論する主題追求型の授業構想と後段での振り返りの工夫によって、子供たちの思考力・判断力・表現力を育み、道徳的実践力を具現化していくことができるのではないかと考え、授業改善に取り組んだ。

 

2、取り組んだこと
(1)自己の生き方を考え議論する主題追求型の授業構想
 ねらいに迫る価値までしっかりとらえて、どの発問が最もふさわしいのかを吟味し授業を構想していくことが大事だと考える。また、価値に迫るためには、子供たちの意見をどのように生かし、整理していくかも重要だ。そこで、中心発問の吟味、価値の類型化、板書の整理を毎時間意識して行っていくことで、子供たちが主題を自分のこととして深く考え友達と議論しながら追求していくことができ、子供たちの思考力・判断力・表現力を育んでいけると考えた。

 

(2)授業の後段での振り返りの工夫    
 授業の後段では振り返りの時間をきちんと確保していくことが大切だ。その上で、導入と振り返りを一体化させ、本時で考えるべき主題を明確にし、導入でも振り返りでも主題について「問い」続けていく。そうすることによって、本時の主題が子供自身のものになり自分の生き方を追求し、道徳的実践力を育んでいくことができると考えた。

 

3、授業の実際
主題名 家族みんなで協力し合って 内容項目4―(3) 
資料名 「ブラッドレーのせい求書」 

出典 「私たちの道徳」3、4年 文部科学省
 本資料は、「主人公ブラッドレーが家での手伝いや習い事の見返りに報酬を得たいと考え、母親に請求書を渡した。母は何も言わずに、請求書通りにお金を渡す。そこには、お金と一緒に母からブラッドレーへの0ドルの請求書が添えられていた」という話だ。
 3年生の子供たちは、父母への愛情を持っていて大切に思う気持ちは強いが、親から受ける愛情は当たり前と思っているところがある。自分がすることはあくまでも手伝いで、家族の仕事を家族の一員として行っているという感覚はあまりない。

 

 本時では、主題を「家族とは」とし、請求書通りにお金がもらえたにもかかわらずブラッドレーがなぜ泣いたのかを考えることで、親が子を思う無償の愛、家族への感謝、そして、自分も家族の一員として家族のために協力していきたいという気持ちを育んでいきたいと願った。
 

 中心発問をより効果的にするためには、その前に行う補助発問も重要だ。そこで、中心発問の前に「お母さんからお金をもらったとき、ブラッドレーはどう思っただろう」と問い、お金がもらえたときのブラッドレーの素直な喜びの気持ちを発表させ、泣いているブラッドレーと対比させた。中心発問では、最初、ブラッドレーの行為に対する反省や後悔に関する意見が多かった。次第に、母親の愛情への気づきの意見が出てきた。一人の子が「お母さんはブラッドレーが子供でお金を持っていないから、0ドルって書いたのではないか」と言った。その意見に対して子供たちに問いかけたところ、「違う。お母さんはブラッドレーのことが大切だから0ドルって書いたんだ」や「お金の問題ではなくブラッドレーのことが好きだから、子供はどんな高いものより大事だから0ドルなんだ」と口々に言った。自分も親から愛されていることに気づいた子供たちは、「親に感謝したい」や「自分も親のために何かをしたい」と言った。子供たちは、「家族とは、みんなを大切にしてくれる。世界一の宝物。助け合っていくもの」とまとめた。
 

 今回の振り返りでは、主題について今の自分を三段階で自己評価させ、その理由を書くようにした。こうすることで、本時で考えさせたい主題がより明確になる。子供たちが書いた振り返りでは、本時の主題「家族とは何か」に迫ることができた振り返りが多かった。また、今の自分やこれからの自分について考えている記述が多かった。翌日の音読カードに、ある保護者が「ぼくも家族の役に立ちたいと言って、家族に優しくしてくれました」と書いてくれていた。その子は、それを冬休み前までずっと続けた。冬休み前のお母さんからのコメントに「洗濯物をたたんでくれたり弟の面倒を見てくれたりしてとても助かりました」と書かれていた。この子は、三段階の振り返りを△にした子で、その理由として「お母さんやお父さんが今まで家族をつくってきて、ぼくはまだ協力したことがないので、協力し合って楽しい家庭を作ろうと思いました」と書いていた。

4、終わりに
 今回の実践によって、本時の主題についての問題意識を生かした発問を取り入れた主題追求型の道徳授業は、子供たちの生きる力・豊かな心を育んでいく授業となっていくことを実感した。後段の振り返りでは、時間の確保や方法を工夫することによって本時の主題が子供自身のものになり自分の生き方を追求し、道徳的実践力を育んでいく一助になる。

 

 30年度からは、子供たちの道徳性に係る成長の様子について評価をしていくことになる。子供たちの発言や会話、感想文、振り返り用紙などを蓄積していくことも大事になってくる。子供たちの道徳性を評価していくということは、教師一人ひとりの道徳性や人間力が問われるということでもある。また、評価の妥当性、信頼性を担保するために、学校として組織的・計画的に行われていくことが重要だ。これからは、道徳教育をチーム体制で取り組んでいく必要がある。道徳の教科化に向け日々の授業をより充実させ、子供たちに真の生きる力・豊かな心を育んでいけるよう、今後も研鑽を積んでいきたい。

(参考資料 「特別の教科 道徳」の指導方法・評価等について〈報告〉平成28年7月22日道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議)
<NO. 146 平成29年3月1日発行より>

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