『ハッピー レター ポスト』大活躍

【学校のちょっといい話】

 

 去年の5月の下旬、4年生のある教室でひとりの女の子が泣いていました。その女の子のランドセルのカバーの片隅に「死ね」とマジックで書かれていたのです。特に対人トラブルを抱えておらず、適度な交友関係を保ちながら楽しく学校生活を送っていた彼女にとって、とても辛い現実でした。


1、児童支援会議と全校朝会
 私は担任の考えを踏まえた上で、児童支援会議を通して次の点を確認しました。

 

(1)事実を学級で明示し、書かれた立場の子の気持ちについての指導を行うこと
(2)学級通信を通じて学級保護者にもこのことについて伝え、学校としての取り組みを伝えるとともに各家庭に協力を求めること
(3)2か月に1回、実施している教育活動アンケートをこの機会にもう一度、校内一斉に実施すること
(4)1週間後に予定されている朝会の校長の話として「いじめ」をテーマにすること
(5)全校の教員に周知し、朝会後に全学級において人権をテーマにした道徳授業を行うこと

 

 また、この時には、「日頃より、子供たちのようすを注意深く観察し、『いじめ』や『いじめの芽』になる状況をとらえ、時にしっかりと指導することは大切であるとともに、子供たちの『よさ』をとらえ『ほめる芽』を育てて、みんなでお互いをたたえあう学級文化も大切にしよう」という「褒めたたえて育てる」学級経営の視点も全校で共通理解しました。
 

 さて、6月2日、朝会の日です。
 

 私は「友達とのかかわり」というテーマで話をしました。パワーポイントで資料を作成し、プロジェクターでプレゼンテーションをしながらの話です。
 

 「だれでも、友達とはなかよく、楽しく接したい。笑顔でいっしょに遊び、いっしょに学びたい。そう思っているでしょう。実は『友達となかよくなれる三つの方法』というのがあるのです。一つは『ともだちに元気にあいさつをする』こと。朝のあいさつ、帰りがけのあいさつ、元気にあいさつしてみること。そして二つめは、『あいてのいいところをほめよう』。じょうずだね、やさしいんだね、とおたがいの『よさ』をほめあうことです。そして三つめが『うれしいことばをいっぱい使おう』。思わずお互いにうれしくなるような言葉、『ありがとう』だってそうだし、『今日は楽しかったね』『また遊ぼうね』もそう。日頃からこれをやっている人はたくさんいると思うけれど、ぜひ覚えておいてください。
 

 逆に『友達にやってはいけない三つの“い”』というのもあります。それは・・・『いたずら』『いじわる』『いやがらせ』・・・これはすべて友だちを傷つけることです。さらに、この三つの『い』は、『絶対に許されない』一つの『い』になってしまうことがあります。『いじめ』・・・決してあってはならないことです。みなさんは『ともだちとなかよくなれる方法』を大切にして、ぜひ楽しい学校生活を送ってください。
 

 ここで、校長先生からみなさんへお知らせがあります。校長先生もみなさんの『うれしかったこと』『感謝したいこと』についてぜひ知りたいのです。そこで校長室の前に、このようなポストを置きました。名前は『ハッピーレターポスト』。『ともだちのよさ』『感謝のことば』『うれしかったこと』を紙に書いてポストに入れて校長先生に教えてください! お手紙、待ってます!」


2、思わぬ効果
 担任によると、あの出来事を受けてこのような形で全校に向けて取り上げてくれたことを、その女の子はとてもうれしかったと言ってくれたそうです。また、その子の保護者も学校の取り組みを理解してくれました。その後、その女の子に対する「いじめ」や「いじめの芽」は一切ありませんでした。

 

 さて、このような経過から設置された「ハッピーレターポスト」。その反響は、それはそれは大きなものがありました。朝会の日の休み時間から、校長室の廊下は子供たちでいっぱいになりました。床で書いている子が多かったため専用のテーブルを用意しました。なんと1週間で、うれしいことに124通の「感謝の手紙」「うれしかったこと報告手紙」が入ったのです。
 

 「あのねこうちょうせんせい、ともだちにね、いっしょにかえろっていわれてうれしかったです」「一ねんせいのころ、ころんでしまったとき、ともだちがやさしくほけんしつにつれていってくれてうれしかったよ」「放送委員をやっているのですが、初めてやった時に機械がわかりませんでした。その時に元放送委員が教えてくれました。感謝です」「登校班の一年の子は歩くのが遅れるのにがんばって一人で歩いています!がんばってほしいです」「今日、体育でリレーでへんな走り方だったけど、ともだちに『はやかった。走り方かわいかった』といってもらってうれしかった」中には、「PTA会議室に差し入れたお菓子がおいしかったとほめられました」「校長先生いつもありがとうございます。特に今日は雨の中、子供たちのために交差点で交通指導をしてくださり、ありがとうございました」保護者からも投書をいただきました。
 

 この企画、目新しさからの勢いで、尻つぼみになるのでは、と不安でした。しかし、時々朝会で内容を紹介したことも功を奏したのか投函は絶えることなく、修了式までに923通のレターをいただきました。レターの内容は20ずつまとめて印刷配付して教職員全員に周知するとともに、校長室の廊下にも掲示しました。「わたしのがあった!」と言ってうれしそうに読んでいる光景が多々見られました。
 

 「私の夢はマンガ家です。みんなをえがおにしたいな」「ぼくのしょうらいのゆめはプロテニスプレーヤーです。でこの前、またじょうずになったきがします」やがて、感謝の気持ちを伝えるレターのほかにも自分の夢を語るレターも出てきました。
 

 「サンキューレター」「ハッピーポスト」「拍手を贈ろう」「あなたにサンキュー」「えがおレター」「笑顔をください」・・・・・・本校の中で学級経営として「ハッピーレターポスト」と同じ趣旨で行っている取り組みのネーミングです。中には、その内容を「ハッピーレターポスト」と連動させながら実践してくれた学級もありました。
 

3、結び
 全国の小中学校においては、児童会や生徒会活動も含めて同じような取り組みをしている学校は多数あるでしょう。その取り組みを実効あるものにし、子供たちに還流できるように環境整備することが学校に求められているミッションだと私は思います。

<NO. 144 平成28年8月1日発行より>

 

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